令和3(2021)年度以降に適用される個人住民税(村民税・県民税)について、主な改正事項は以下のとおりです。
給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替
働き方の多様化をふまえ、特定の収入にのみ適用される給与所得控除及び公的年金等控除の控除額を一律10万円引き下げ、収入の種類に関わらず適用される基礎控除の控除額を10万円引き上げます。
給与所得控除の見直し
給与所得控除を一律10万円引き下げます。
給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を850万円に、適用する控除の上限額を195万円に、それぞれ引き下げます。
給与所得の速算表(令和3年度から)
給与等の収入金額の合計額 | 給与所得の金額 | ||
から | まで | ||
0円 | 550,999円 | 0円 | |
551,000円 | 1,624,999円 | 給与等の収入金額の合計額-550,000円 | |
1,625,000円 | 1,799,999円 |
給与等の収入金額の合計額を「4」で割って千円未満の端数を切り捨てる。 (算出金額=A) |
A×4×60%+100,000円 |
1,800,000円 | 3,599,999円 | A×4×70%-80,000円 | |
3,600,000円 | 6,599,999円 | A×4×80%-440,000円 | |
6,600,000円 | 8,499,999円 | 給与等の収入金額の合計額×90%-1,100,000円 | |
8,500,000円以上 | 給与等の収入金額の合計額-1,950,000円 |
公的年金等控除の見直し
公的年金等控除額を一律に10万円引き下げます。
公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の公的年金等控除額について、195万5千円を上限とします。
公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が、1,000万円を超え2,000万円以下である場合には一律に10万円を、2,000万円を超える場合には一律に20万円を、それぞれ上記の見直し後の公的年金等控除額からさらに引き下げます。
令和3年度からの公的年金等に係る雑所得の金額(速算表)
年齢65歳未満
公的年金の収入 A |
公的年金等にかかる雑所得以外の所得にかかる合計所得金額 | ||
1,000万円以下 |
1,000万円超 2,000万円以下 |
2,000万円超 | |
130万円以下 | A-60万円 | A-50万円 | A-40万円 |
130万円超 410万円以下 |
A×75%-27万5千円 | A×75%-17万5千円 | A×75%-7万5千円 |
410万円超 770万円以下 |
A×85%-68万5千円 | A×85%-58万5千円 | A×85%-48万5千円 |
770万円超 1,000万円以下 |
A×95%-145万5千円 | A×95%-135万5千円 | A×95%-125万5千円 |
1,000万円超 | A -195万5千円 | A-185万5千円 | A-175万5千円 |
年齢65歳以上
公的年金の収入 A |
公的年金等にかかる雑所得以外の所得にかかる合計所得金額 | ||
1,000万円以下 |
1,000万円超 2,000万円以下 |
2,000万円超 | |
330万円以下 | A-110万円 | A-100万円 | A-90万円 |
330万円超 410万円以下 |
A×75%-27万5千円 | A×75%-17万5千円 | A×75%-7万5千円 |
410万円超 770万円以下 |
A×85%-68万5千円 | A×85%-58万5千円 | A×85%-48万5千円 |
410万円超 770万円以下 |
A×95%-145万5千円 | A×95%-135万5千円 | A×95%-125万5千円 |
1,000万円超 | A -195万5千円 | A-185万5千円 | A-175万5千円 |
所得金額調整控除の創設
給与所得控除の上限額を220万円から195万円に引き下げることにより、給与等の収入金額が850万円を超える人は、税負担が増えることになります。また、給与所得と年金所得がある人は給与所得控除及び年金所得控除が合わせて20万円引き下げられることになるため、基礎控除への振替(10万円)だけでは足りません。
そこで、所得金額調整控除を設け、以下の対象者について適用します。
所得額調整控除適用対象者
1 給与等の収入金額が850万円を超え、次のアからウのいずれかに該当する場合
ア特別障害者に該当する
イ年齢23歳未満の扶養親族を有する
ウ特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有する
<調整額>
所得金額調整控除額=(給与等の収入額-850万円)×10%
※給与等の収入金額が1,000万円を超える場合は1,000万円とする
2 給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額があり、その合計額が10万円を超える場合
<調整額>
所得金額調整控除額=(給与所得控除後の給与等の金額+公的年金等に係る雑所得の金額)-10万円
※それぞれ10万円を超える場合は10万円とする
「1」、「2」の両方に該当する場合は、「1」の控除後に「2」の金額を控除します。
基礎控除額の見直し
基礎控除額を10万円引き上げます。
合計所得金額が2,400万円を超える納税義務者についてはその合計所得金額に応じて控除額を逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える納税義務者については基礎控除を適用しません。
基礎控除額の明細
合計所得金額 | 基礎控除の額(括弧内は所得税の控除額) |
2,400万円以下 | 43万円(48万円) |
2,400万円超2,450万円以下 | 29万円(32万円) |
2,450万円超2,500万円以下 | 15万円(16万円) |
2,500万円超 | 適用なし |
所得控除等の合計所得金額の見直し
扶養要件
扶養親族等の区分 | 合計所得金額の要件 |
同一生計配偶者及び扶養親族 | 48万円以下 |
配偶者特別控除にかかる配偶者 | 48万1円以上133万円以下 |
勤労学生 | 75万円以下 |
その他
家内労働者等の所得計算の特例における必要経費の最低保証額 | 55万円 |
調整控除の見直し
合計所得金額が2,500万円を超える場合は、調整控除を適用しません。
未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し
これまで、同じひとり親であっても、離婚・死別であれば寡婦(夫)控除が適用されるのに対し、未婚の場合は適用されず、婚姻歴の有無によって控除の適用が異なっていました。また、男性のひとり親と女性のひとり親で控除の額が違うなど、男女の間でも扱いが異なっていました。
そこで、全てのひとり親家庭に対して公平な税制支援を行う観点から、以下の見直しを行います。
子どもの貧困に対応するため、前年の合計所得金額が135万円以下であるひとり親に対し、個人住民税を非課税とします。
婚姻歴の有無や性別にかかわらず、生計を同じとする子(総所得金額等が48万円以下)を有する単身者を「ひとり親」とし、「ひとり親控除」(控除額30万(所得税35万)円)を適用します。
ひとり親に該当しない寡婦については、引き続き寡婦控除(控除額26万(所得税27万)円)を適用することとし、子以外の扶養親族を持つ寡婦については、新たに所得制限(合計所得金額500万円以下)を設けます。
寡婦控除の特別加算(扶養親族である子を有し、合計所得金額が500万円以下である寡婦について行う加算)及び寡夫控除は廃止します。
本人が女性
配偶関係 | 死別 | 離別 | 未婚のひとり親 | ||||
本人所得 | ~500万円 | 500万円~ | ~500万円 | 500万円~ | ~500万円 | ||
扶養親族 | 有 | 子 | 30万円 | 30万円 | 30万円 | ||
子以外 | 26万円 | 26万円 | |||||
無 | 26万円 |
本人が男性
配偶関係 | 死別 | 離別 | 未婚のひとり親 | ||||
本人所得 | ~500万円 | 500万円~ | ~500万円 | 500万円~ | ~500万円 | ||
扶養親族 | 有 | 子 | 30万円 | 30万円 | 30万円 | ||
子以外 | |||||||
無 |
※ひとり親控除、寡婦控除のいずれについても、住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある者(事実婚)は対象外とします。
個人住民税の人的非課税における対応
所得控除の変更に伴い、個人住民税が非課税となる所得金額が変更となります。
個人住民税のかからない人
1月1日現在、生活保護法による生活扶助を受けている人
1月1日現在、障害者、未成年者、寡婦、ひとり親で前年の合計所得金額が135万円以下の人
※寡婦及びひとり親のうち、住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある者(事実婚)は対象外とします。
非課税要件
区分 | 非課税とされる人 |
障害者等に対する非課税措置 | 非課税措置の合計所得要件:135万円以下 |
均等割の非課税限度額 | 所得金額≦28万円×世帯人員数+10万円+(同一生計配偶者、扶養親族を有する場合は16万8千円) |
所得割の非課税限度額 | 所得金額≦35万円×世帯人員数+10万円+(同一生計配偶者、扶養親族を有する場合は32万円) |
※所得金額は、給与所得者の場合、収入金額から給与所得控除を引いた後の金額をいいます。
※世帯人員数は、本人、同一生計配偶者及び扶養親族の合計数をいいます。
※同一生計配偶者とは、居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもののうち、合計所得金額が48万円以下であるものをいいます。
給与支払報告書等の光ディスクによる提出義務基準の引き下げ
給与支払報告書および公的年金等支払報告書のeLTAX(エルタックス)または光ディスク等による提出義務制度について、判定基準となるその年の前々年に提出すべきであった支払調書等(給与支払報告書の場合は所得税に係る給与所得の源泉徴収票、公的年金等支払報告書の場合は所得税に係る公的年金等の源泉徴収票)の枚数が100枚以上(これまでは1,000枚以上)に引き下げられます。
適用開始は、令和3年1月1日以後に提出すべき給与支払報告書および公的年金等支払報告書
青色申告特別控除額の見直し
取引を正規の帳簿の原則に従って記録している者に係る青色申告特別控除の控除額を10万円引き下げ、55万円とします。
ただし、取引を正規の帳簿の原則に従って記録している者であって、次に掲げる(a)または(b)のいずれかに該当する場合は、青色申告特別控除の控除額を65万円とします。
(a)その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律に定めるところにより、電磁的記録の備え付け及び保存を行っていること。
(b)その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出をその提出期限までに電子情報処理組織(e‐Tax)を使用して行うこと。